第61回:jQuery 4.0正式版の影響と、レガシーサイトを現実的に前へ進める方法

公開日:2026-02-01|キーワード:jQuery 4.0 / 移行 / セキュリティ / レガシー刷新
jQuery 4.0 impact and migration strategy

「まだまだjQueryのサイトが現役」——これは事実です。CMSや長年運用されてきた業務Web、社内ツール、プラグイン資産。 そして何より、「機能は変わらないのに全面刷新の説明が難しい」という現場のリアルがあります。

そんな中、2026年1月に jQuery 4.0 が正式リリースされました。約10年ぶりのメジャーアップデートです。 破壊的変更はゼロではありませんが、公式の見解としては 「多くのプロジェクトは最小限の修正でアップグレード可能」とされています。 この記事では、いま動いているjQuery資産を「安全に延命」しつつ、次の選択肢へ進むための要点を、技術者向けに整理します。

この記事のゴール

1. 後方互換性:破壊的変更は「限定的」だが、当たりどころはある

jQuery 4.0の非互換は、大半が長年 Deprecated(非推奨)だった機能の削除です。 「使っていなければ何も起きない」一方、古いコード・古いプラグインが混ざると一気に出ます。

1-1. 削除された Deprecated API(代表例)

1-2. jQueryオブジェクトからの内部用メソッド削除

以前は内部用だった push/sort/splice などが、jQueryオブジェクトから削除されました。 もし直接使っていた場合は、標準の配列メソッドを call 適用する形へ修正します。

[] .push.call($elems, elem)

1-3. 挙動が変わる(=テスト必須)ポイント

ここは「動いているからOK」になりやすい場所です。特にフォームのフォーカス制御、UIコンポーネント(EasyUI等)、 入力補助、バリデーション、キーボード操作まわりは、移行後に実画面での再テストをおすすめします。

2. 移行の実務:いきなり4.0に上げない(段階的が安全)

2-1. 公式ガイド+Migrateの活用

jQueryチームは 4.0対応のアップグレードガイドと、jQuery Migrate 4.0プラグインを提供しています。 まずは Migrate を読み込み、コンソール警告を確認すると、廃止機能の使用箇所や必要な修正を具体的に把握できます。

2-2. プラグイン互換性(ここが一番現実)

jQuery本体よりも、実際に詰まりやすいのは古いプラグインです。 非推奨API(例:jQuery.trim 等)に依存していると、4.0で止まります。

3. セキュリティ強化:Trusted Types / CSP を“現場で使える”形に

jQuery 4.0はセキュリティファーストなアップデートです。特に注目は、Strict CSP環境で重要になる Trusted Types対応と、スクリプト評価まわりの挙動整理です。

3-1. Trusted Types対応

Trusted Typesは、DOM操作に渡す文字列を「信頼できる型」にラップして、不用意なスクリプト混入を防ぐ仕組みです。 4.0では、$(trustedHtmlObj)$elem.html(trustedHtmlObj) のように TrustedHTML を渡しても ポリシー違反になりにくい実装に調整されています。

3-2. $.ajax の “スクリプト自動実行” 廃止

CSP違反や意図しない実行のリスクを減らす方向です。Strict CSPを導入しているプロダクトほど恩恵があります。

3-3. prototype汚染への対処

データストレージ周りの実装見直しにより、prototype汚染のような問題に対する対策も含まれるとされています。 jQuery 3.5でHTML prefilter処理を変更しXSS脆弱性へ対応した経緯があり、4.0でも同様に既知のリスクを塞ぐ方向です。

4. パフォーマンスとモダナイズ:軽量化だけでなく“開発フロー”が変わる

4-1. ファイルサイズと読み込み

4-2. ES Modules(ESM)対応とビルドの刷新

4-3. 「標準APIを使う」方向へ

trim/parseJSON等の削除は、標準APIが十分に使える時代になったことの表れです。 Deferredについても「対応ブラウザならネイティブPromiseを使うべき」という方針が明確になりました。

4-4. その他の改善(Ajax/セレクタ/イベント)

5. 旧ブラウザ:IE10以前は終了。次はIE11も終了予定

jQuery 4.0はIE10以前を公式にサポート終了しました。対応ブラウザは「IEは11のみ」+モダンブラウザ(現行と一つ前まで)です。

6. 「jQueryは時代遅れ?」の答え:残る理由と、進め方の現実

6-1. 普及率は依然として高い(ただし新規採用は減少)

Web全体では、依然としてjQueryは高い利用率を維持しています。一方で「動いているサイトに残っている」ことと 「新規案件で選ばれている」ことは別で、後者は減少傾向です。

6-2. Vanilla JSで代替できる領域が増えた

6-3. React/Vue等との違い(根本)

jQueryは「DOMを直接操作するライブラリ」。React/Vue等は「状態管理とコンポーネント化を含むアプリ開発プラットフォーム」です。 UIが複雑になるほど、jQueryだけでの継続はスパゲッティ化しやすくなります。

ただし、React/VueはDOMを内部で管理するため、アプリ内で不用意にjQueryでDOMを書き換えると不整合を招きます。 併用する場合は「管轄を分ける」「ライフサイクルの外に追い出す」等の工夫が必要です。

6-4. それでもjQueryが有用なケース

7. じゃあ、現場ではどう動く?(おすすめの意思決定フロー)

  1. 対象ブラウザを確定(IEが要るか、要らないか)
  2. IEが要る → jQuery 3.6最新+必要最小の保守
  3. IEが要らない → 3.6最新 → Migrate → 4.x の段階移行
  4. プラグイン棚卸し(古いプラグインが最大リスク)
  5. 挙動が変わる領域(フォーカス/フォーム/UI)を重点テスト
  6. 中長期で新規機能はVanilla JS/TypeScript/React等へ寄せ、jQuery依存を徐々に減らす

まとめ:全面刷新が無理でも、前に進める

jQuery 4.0は「レガシーの終わり」ではなく、むしろ現代のブラウザ・セキュリティ要件に合わせて、既存資産を延命できる更新です。 そして現場では、刷新の理想論よりも「止めずに前に進める」設計が重要になります。

参考(一次情報)

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