第85回ブログ|GitHub Copilot Fusion を初心者向けにやさしく解説 ─ 「どのAIを使うか」をAIが決める時代に、ClaudeやGPTとの違いを考える

GitHub Copilot Fusion の仕組みをやさしく解説

2026年10月28日、プログラミングを手伝ってくれるAI「GitHub Copilot(コパイロット)」に、Copilot Fusion(フュージョン)という機能が正式に加わりました。

これまでのCopilotでは、ClaudeやGPTなど、どのAIモデルに答えてもらうかを利用者が選ぶのが基本でした。Copilot Fusionを選ぶと、その選択をCopilotが仕事ごとに代わりに行い、必要なら複数のモデルを組み合わせて1つの答えを返してくれます。

この記事では、公式ドキュメントと発表記事をもとに、仕組みをできるだけやさしくご紹介します。後半では、「ClaudeやGPTを直接使うのと何が違うのか」「これからの主流になるのか」について、当社の考えをお話しします。

この記事の内容
  1. まず前提:Copilotの「モデル選び」とは
  2. Copilot Fusionをひとことで言うと
  3. 仕事に合わせて選ばれる3つの働き方
  4. 利用者が選ぶのは「作業レベル」だけ
  5. 使える場所と始め方
  6. 料金の考え方
  7. 手元のパソコンのAIも使えるように(プレビュー)
  8. 知っておきたい注意点
  9. 誕生の経緯と、発表されている成績
  10. 考察1:ClaudeやGPTを直接使うのと何が違う?
  11. 考察2:これからの主流になるのか
  12. 当社のおすすめの使い分け
  13. まとめ

まず前提:Copilotの「モデル選び」とは

GitHub Copilotは、プログラムを書く作業をAIが手伝ってくれるサービスです。Visual Studio Code(VS Code)などのエディタの中で、AIに質問したり、コードの修正を頼んだりできます。

Copilotの特徴の1つは、1つの会社のAIだけでなく、いろいろな会社のAIモデルを使えることです。画面には「モデルピッカー」というモデルの選択欄があり、AnthropicのClaude、OpenAIのGPTなどから、使うモデルを選べます。

選べるのは便利な反面、悩みのもとにもなっていました。

Copilotにはこれまでも、モデルを自動で選ぶ「Auto(自動選択)」がありました。Copilot Fusionは、その考え方をさらに進めたものです。

用語メモ
AIモデル(LLM)
文章やプログラムを読み書きするAIの「頭脳」にあたる部分です。Claude(Anthropic社)、GPT(OpenAI社)、Gemini(Google社)などがあります。同じ会社の中でも、速くて安いもの、じっくり考えて賢いものなど、いくつもの種類があります。
ルーター
もとはネットワークで通信の行き先を決める機械のことです。AIの分野では、「この質問はどのモデルに回すか」を決める仕組みをこう呼びます。
オーケストレーター
オーケストラの指揮者のように、複数のAIモデルに役割を割り振り、連携させて1つの仕事を仕上げる仕組みです。

Copilot Fusionをひとことで言うと

公式ドキュメントでは、Copilot Fusionは「実行時にモデルを振り分け、連携させる仕組み(ルーター兼オーケストレーター)」と説明されています。

たとえるなら、腕のいい「現場監督」です。

利用者は、モデルピッカーで「Copilot Fusion」を選ぶだけです。特定のモデルを選ぶのではなく、「仕事ごとにモデルを選んで連携させる仕組み」を選ぶ、というのがポイントです。作業の途中でモデルを切り替えたり、「この段階にはどのモデルが合うか」を考えたりする必要はありません。

モデルを選ぶときには、仕事の内容だけでなく、各モデルがその時点で混み合っていないか、止まっていないかといった状態も考慮されます。


仕事に合わせて選ばれる3つの働き方

Copilot Fusionは、頼まれた仕事を評価し、「推論」「コードを書く力」「不具合の調査(デバッグ)」「ツールの使いこなし」といった能力の目安をもとに、求められる品質を満たす中で、いちばん効率のよい進め方を選びます。進め方(実行パターン)は次の3種類です。

実行パターン何をするかたとえると
シングル(Single)1つのモデルが仕事を最後までこなします職人さんが一人で仕上げる
カスケード(Cascade)効率のよい(軽くて安い)モデルが下書きを作り、判定役がそれを確認します。合格ならそのまま採用し、足りなければより高性能なモデルに引き継ぎます若手が下書きし、ベテランが確認。だめならベテランが引き継ぐ
批評(Critique)1つのモデルが下書きを作り、複数のモデルがそれぞれ並行してレビューします。意見をまとめたうえで、最初のモデルが手直しします書いた原稿を、複数の人が赤ペンでチェックしてから直す

※日本語版の公式ドキュメントでは、Cascadeが「重ねて表示」と訳されていますが、英語の原文では「段階的に引き継ぐ」という意味合いです。この記事では「カスケード」と表記しています。

進め方は質問(プロンプト)ごとに選ばれます。そのため、同じ会話の中でも、最初の質問はシングル、次の質問は批評、ということが起こります。

大切なのは、必要なときだけモデルを追加で呼び出すことです。簡単な仕事でわざわざレビューを挟むことはないため、待ち時間や料金のムダが出にくくなっています。シングルは1つのモデルに頼むのと同じように動き、カスケードと批評はレビューが入る分だけ時間がかかります。

画面ではどう見えるの?


利用者が選ぶのは「作業レベル」だけ

利用者が決めるのは、「どれくらい力を入れて取り組んでほしいか」という作業レベルです。品質・料金・速さのどれを優先するかを、ざっくり指定するイメージです。

作業レベル優先すること向いている仕事
Fusion Standard料金・品質・速さのバランスふだんの作業。仕事ごとに1つのモデルが選ばれます
Fusion Highほどよく料金を抑えつつ、複数モデルの連携も使う複雑な不具合の修正や、複数のファイルにまたがる変更など、範囲がはっきりした大きめのコーディング作業
Fusion Max最先端の性能(料金の効率も考慮はする)とことん深く考え、徹底的に分析してほしい仕事
Fusion Fast速さが必要な場面専用利用者は選べません。VS Codeのインラインチャット(コードの中で直接AIに頼む機能)でのみ使われます

使える作業レベルは、Copilotのプランによって異なります。

作業レベルFreeStudentProPro+MaxBusinessEnterprise
Fusion Standard○○○○○○○
Fusion High---○○○○
Fusion Max---○○○○
Fusion Fast○○○○○○○

無料プランを含むすべてのプランで、Fusion Standardを使えます。HighとMaxは、Pro+以上の個人プランと、法人向けのBusiness・Enterpriseで使えます。


使える場所と始め方

Copilot Fusionは、次の4つの環境で正式に使えます。発表では、ほかの環境にも近く対応するとされています。

始め方はかんたんです。

  1. エディタやCopilotのアプリを最新版に更新します
  2. モデルピッカーを開き、「Copilot Fusion」を選びます
  3. 作業レベル(Standard・High・Max)を選びます

上の4つの環境では、Copilot Fusionがこれまでの「Auto」に置き換わる形で、順番に提供が広がっています。モデルピッカーに「Auto」ではなく「Copilot Fusion」が表示されていれば、使える状態です。なお、Visual Studio、Xcode、Eclipse、GitHubのWebサイト上のCopilot Chatなどでは、引き続き従来のAutoが使われます(2026年11月3日時点の公式ドキュメントによる)。

会社でCopilotを導入している場合は、管理者がCopilot Fusionで使えるモデルを決めたり、Copilot Fusionを標準の設定にしたりできます。管理者が使用を止めているモデルは、Copilot Fusionも使いません。


料金の考え方

また、会話の中心はできるだけ同じモデルのまま続けるように作られています。AIサービスには、直前までの会話をため置いて再利用すると安く・速くなる「キャッシュ」という仕組みがあり、むやみにモデルを切り替えるとその恩恵を失ってしまうためです。レビュー役などの補助的なモデルには、必要な情報だけが渡されます。

※ちなみに、従来のAutoでも有料プランでは10%の割引があります。Copilot Fusionの30%引きは期間限定のため、12月以降の扱いは公式の発表をご確認ください。


手元のパソコンのAIも使えるように(プレビュー)

同じ日に、手元のパソコンで動くAIモデル(ローカルモデル)もCopilot Fusionの選択肢に入れられるようになりました。こちらはまだ試験的な機能(パブリックプレビュー)で、今後変わる可能性があります。

簡単な仕事は手元のパソコンで、難しい仕事はクラウドの高性能なモデルで、という使い分けを自動でしてくれるわけです。ただし、発表では次の点も明記されています。

ローカルLLMについては、第81回「日本語に強いローカルLLM徹底比較」でもくわしくご紹介しています。


知っておきたい注意点


誕生の経緯と、発表されている成績

Copilot Fusionのもとになったのは、2026年9月4日に研究段階の試験版として公開された「Project HydraFusion(ハイドラフュージョン)」です。GitHubはその発表で、HydraFusionの目標を「最良のモデルを選ぶことから、仕事ごとに最良の解き方を組み立てることへ」と表現していました。

正式版のCopilot Fusionは、HydraFusionの「複数モデルの連携」と、従来のAutoの「モデル選び」の両方の長所を組み合わせたものだと説明されています。試験版でAutoやHydraFusionを選んでいた人は、対応する作業レベルに自動で切り替わります。

GitHubが発表している数値

試験版の段階では、3種類のコーディング用の評価で、AnthropicのClaude Opus 5を単独で使った場合と比べて次の結果だったと発表されています(いずれもGitHub社内での事前評価です)。

評価(ベンチマーク)料金(Opus 5比)正答率(Opus 5比)
TerminalBench 2.167%安い4.9ポイント高い
DeepSWE36%安い1.5ポイント低い
CheckpointBench(GitHub独自)65%安い0.1ポイント低い

正式版の発表では、外部の評価指標「Artificial Analysis Coding Agent Index」で、Fusion Maxが60点となり、Claude Opus 5.5 Max を使ったClaude Codeに2ポイント差まで迫ったとしています。しかも、1つの仕事あたりの平均API料金は約半分、使ったトークン(AIが処理する文字の単位)も約半分、かかった時間は約40%短かったとのことです。

通信大手AT&Tのエンジニアも、「開発者は難しい仕事のために強力なモデルを選び、日常の作業に戻すのを忘れがちだった。Copilot Fusionはその手間をなくしてくれた」という趣旨のコメントを寄せています。

※数値はいずれもGitHubの発表によるもので、当社では計測していません。ベンチマークの結果が、そのまま皆さんの業務にあてはまるとは限りません。


考察1:ClaudeやGPTを直接使うのと何が違う?

ここからは、公開情報をもとにした当社の考察です。

まず整理しておきたいのは、ClaudeやGPTは「AIモデル(エンジン)」であり、Copilot Fusionは「エンジンの使い方を決める仕組み」だということです。Copilot Fusionの裏側でも、ClaudeやGPTなどのモデルが働いています。つまり、両者は対立するものではなく、層が違うものです。

比べるべきなのは、「Claude Code(Anthropic)やCodex(OpenAI)のように、1つの会社のモデルを、その会社の道具で使う」場合と、「Copilot Fusionに、複数の会社のモデルの使い分けを任せる」場合です。

Copilot Fusionならではの付加価値

  1. 会社の垣根をこえた「別の目」でのチェック
    HydraFusionの発表では、批評のパターンについて「別の系統のモデルがレビューする」と説明されています。人間でも、自分で書いた文章の誤りは自分では気づきにくいものです。同じ会社のモデル同士より、学習のしかたが違うモデルに見てもらうほうが、見落としを拾える可能性が高まります。これは、1社のモデルしか持たない道具には、構造的にまねしにくい強みです。
  2. 「ちょうどいい」モデルを自動で選んでくれる
    簡単な仕事は安いモデル、難しい仕事は高いモデルと、仕事ごとに切り替えてくれます。AT&Tのコメントにあるように、「高いモデルを選んだまま戻し忘れる」というムダがなくなります。利用者が増えるほど、この差は会社全体の費用に効いてきます。
  3. モデル選びの知識がいらない
    AIモデルは、数か月ごとに新しいものが登場します。そのたびに比較記事を読んで乗り換えを検討するのは大変です。Copilot Fusionでは、新しいモデルの評価と組み込みをGitHubが行うため、利用者は何もしなくても新しいモデルの恩恵を受けられます。
  4. 1社のトラブルに強い
    モデルを選ぶときに、各モデルが混んでいないか、止まっていないかも考慮されます。1つの会社のサービスが不調でも、ほかの会社のモデルに回れる余地があります。
  5. 会社として管理しやすい
    使ってよいモデルを管理者が決め、その範囲の中で自動的に使い分けてくれます。「どのAIを使わせるか」というルールと、「現場が楽に使えること」を両立しやすくなります。

逆に、ClaudeやGPTを直接使う良さ

なお、AnthropicやOpenAIも、自社のモデルの中では「仕事に応じて軽いモデルと重いモデルを使い分ける」仕組みを取り入れています。モデルを自動で使い分けるという考え方そのものは、業界全体の流れです。そのうえでCopilot Fusionの独自性は、「複数の会社のモデルを、1つの仕事の中で組み合わせられる」点にあると当社は考えています。


考察2:これからの主流になるのか

当社の見立て:「ふだん使いの標準」としては主流になっていく可能性が高い。ただし、モデルを指名して使う方法がなくなるわけではない

主流になると考える理由

それでも残る課題

自動車にたとえると、オートマチック車が主流になっても、マニュアル車を好む人や、マニュアルでなければならない場面が残っているのに似ています。ふだんはCopilot Fusionに任せ、ここぞという場面ではモデルを指名する。当面は、そうした「任せる」と「指名する」の使い分けが定着していくと当社は考えています。


当社のおすすめの使い分け

有料プランの方は、30%引きの期間(2026年11月30日まで)に、いつもの作業をCopilot Fusionで試してみるとよいでしょう。会社で導入している場合は、管理者の方がCopilot Fusionで使えるモデルの設定を一度確認しておくと安心です。


まとめ

AIの世界では、「どのモデルがいちばん賢いか」という競争が続いてきました。Copilot Fusionは、そこに「モデルをどう組み合わせるか」という新しい競争の軸を持ち込んだと言えそうです。一人の天才に頼るより、得意分野の違うメンバーでチームを組むほうがよい仕事ができる。人間の職場でおなじみの考え方が、AIにも当てはまり始めているのは興味深いことです。

GitHub Copilotをはじめとする生成AIの業務への取り入れ方や、開発体制の見直しなどでお困りのことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。


参考資料(2026年11月3日時点で確認)


本記事は2026年11月3日時点の公開情報に基づきます。ベンチマークや料金の数値はGitHubの発表によるもので、当社で計測したものではありません。「考察」の部分は当社の見解です。提供範囲・料金・割引は変更される場合があるため、導入前には公式情報をご確認ください。